造血刺激剤
白血球、赤血球、血小板はいずれも造血の親玉、造血幹細胞から造られます。造血幹細胞が機能や形の全く異なる細胞を造るには、さまざまな造血因子の影響があります。白血球、赤血球、血小板の造血に関わる主な造血因子は、遺伝子組換えにより治療薬として製剤化されており、それぞれ細胞減少時に回復を促す目的で使われます。
白血球の造血因子;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
・抗がん剤治療ではしばしば白血球が減少しますが、白血球、中でも好中球の減少は細菌感染症のリスクとなります。できるだけ早く好中球の回復を促し、リスクを減らすためにG-CSF製剤を使います。抗がん剤投与から24時間空けて投与するのが望ましいとも言われます(細胞保護のため)。
・再生不良性貧血や好中球減少症など、好中球が減少する疾患でも使われます。
・骨髄性白血病の芽球が存在する状態では、G-CSF製剤によって芽球の増加を促してしまうリスクがあるため、投与は慎重に判断する必要があります。骨髄異形成症候群もしばしば好中球減少をきたしますが、この疾患も少数の芽球が存在することがあるため注意が必要です。
・その他、末梢血幹細胞移植にあたっての造血幹細胞採取には必要不可欠です。また、急性骨髄性白血病の化学療法で、あえて抗がん剤と併用して抗がん剤効果の増幅を狙うという治療メニューもあります。
・副作用:時に発熱、頭痛、骨痛が出ることがあります。骨痛は造血刺激に伴う生理的なものと考えられます。
赤血球の造血因子;エリスロポエチン
・赤血球造血を促しますが、造られる場所は腎臓です。腎機能が慢性的に低下すると、エリスロポエチンの産生が低下し、貧血になることがあります(腎性貧血)。腎性貧血の治療に多用されていますが、赤血球造血が障害される骨髄異形成症候群の貧血に対して高用量で使われます。用法上は週1回、毎週と、回数が頻回なのが難点です。
・副作用:少ないですが、血圧が高くなることがあります。また、まれに頭痛やだるさ、吐き気が出る方がいます。
血小板の造血因子;トロンボポエチン受容体作動薬
厳密には造血因子ではなく、造血因子がつく受容体に働くお薬です。血小板が減少する特発性血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血に適応があります。内服薬のエルトロンボパグ(レボレード)と皮下注射薬のロミプロスチム(ロミプレート)の2種類があります。
・副作用:頭痛が出ることがあります。また、まれですが長期的に骨髄組織の変性(線維化=線維成分が増える)が報告されています。