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特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

  • 血小板減少と出血症状が問題となる病気です。骨髄で血小板は問題なく造られていますが、体内で血小板に反応してしまう抗体蛋白ができてしまい、抗体蛋白のくっついた血小板が脾臓という臓器で壊されてしまうようになります(一種の免疫異常に起因します)。骨髄もさらに頑張って血小板を造ろうとしますが次々壊されてしまうため、結局血小板数が減少します。慢性的に5〜10万の方もいますが、5万を割ってくると注意が必要で、3万以下となってきたら状況により治療を検討、2万以下の場合は基本的に治療をお勧めします。
  • ITPの診断は除外診断です。他に血小板が減少する原因がないかを慎重に評価した上、特になければ診断に至ります。
  • 診断と同時にピロリ菌感染の有無を確認することが大切です。ピロリ菌陽性の場合、ピロリ菌感染が原因となっていることがあり、ピロリ菌の除菌で6割の方が改善すると言われます。ピロリ菌感染は血液検査、吐いた息の検査(尿素呼気試験)で調べられます。ただし血小板が高度減少(1万未満)している場合は一刻も早く血小板数を上げる必要があり、ピロリ菌除菌の効果は一定日数を要するため、除菌と並行して以下の治療も開始することがあります。
  • 治療の第1選択はステロイドです。体内で血小板が壊される反応を抑える作用があります。2/3の患者さんで効果があり、うまくいくと投薬を終了できる可能性があります(平たく言うと“治る”可能性があります)。ステロイド治療の難点は、副作用と、減量していく過程での再燃(回復していた血小板値が再び下がってしまう)です。副作用としては、不眠、食欲亢進、精神的な変調などがあり、内服期間が1〜2ヶ月と長くなると高血圧、高脂血症、骨粗しょう症、体幹脂肪の増加、手足の筋肉量減少、白内障、緑内障など、心配になるような副作用が出る可能性がありますが、そういう症状をきたさないようステロイドは早めに減量していく必要があります。
  • ステロイドの反応がない場合、減量中に再燃してしまった場合は次の治療法を試します。2番目に候補となるのは、血小板産生を刺激し、血小板細胞の成長を促す作用をもつお薬であり、TPO受容体アゴニストと呼ばれます。1日1回の飲み薬(エルトロンポパグ)と、週1回の注射薬(ロミプロスチム)があります。飲み薬は食事と時間を空けて飲む必要があり、血小板値により1〜5錠で調節をします。注射薬も血小板値により量の調節をします。8割の方で効果があり、基本的にある程度の血小板値を維持するよう薬はずっと継続することが多いですが、投薬を終了できる可能性も0ではありません。
  • TPO受容体アゴニストの他、血小板破壊の現場となる臓器=脾臓を手術で摘出する方法(脾摘)も選択肢となります。2/3の方で効果が見られ、その後寛解を維持することも少なくありません。脾臓摘出による体への影響は、一部の感染症に対する抵抗力低下です。このため、手術の前に肺炎球菌ワクチンを接種しておきます。
  • その他、リツキシマブという抗体薬も一部の方で有効です。週1回の点滴を計4回行い、1ヶ月前後を目安に40〜60%くらいの方である程度の効果が見られます。ただし、長期間の治療効果は期待しにくいと言われます。
  • ホスタマチニブは2023年に登場した比較的新しい内服薬です。上記の治療でなかなかうまくいかない患者さんが対象とされています。
  • 血小板減少が高度(1万未満)で出血症状が強い場合は、重大な出血リスクを避けるため2-3日以内に血小板を一時的に上昇させる方法として、免疫グロブリン注射があります。概ねある程度は血小板値を上げることができますが、2週間以内に数値は元に戻ってしまいます。
  • ITPは国が定めた難病に該当します。お住まいの自治体で手続きを頂くことで、ITPに関する診療において医療費助成が受けられます。

ステロイド、TPO受容体アゴニスト、ピロリ菌除菌を中心に治療を行います。血小板が正常化し、治療が離脱できれば最善ですが、難しい場合は出血リスクをできるだけ抑える長期管理が必要です。

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