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鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは
<要点>
・鉄不足が原因の貧血(貧血とは、ヘモグロビンが低い状態)
・月経のある若年〜中年の女性に多い。逆に、月経のない方に見られた場合は注意。
・赤血球が小さくなるので、MCVという数値が低くなる。(MCVは健診でも測定されることがあります)
フェリチン(体内貯蔵鉄のマーカー)の数値が12 (ng/mL)未満 ←これを確認して正確な診断となります
 
体内の鉄は、赤血球に含まれるヘモグロビン内の鉄と、肝臓に貯蓄されている貯蔵鉄が大部分を占めます。鉄は食事から日々摂取されるものの、摂取量よりも喪失量が上回ると鉄不足となります。鉄不足が続くと貯蔵鉄が減少し、続いて血液中の鉄濃度、ヘモグロビン産生が低下し、貧血となります。軽度の貧血でとどまる人、貧血が一時的な人もいますが、喪失量が多い状態が続くと貧血が徐々に進行し高度な貧血となる人もいます。

                 
鉄不足となる原因
<主な原因>
生理出血(最も多い)
消化管出血
<その他の原因>
・妊娠中
・慢性的な胃炎
・ピロリ菌感染
・成長期
・激しい運動
・胃酸を抑える胃薬の服用
・胃や十二指腸の切除後
鉄不足となる原因はいくつかありますが、生理出血、特に過多月経が最も多い原因です。生理痛が強い方、出血量の多い方は、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮内ポリープなど子宮に原因がある可能性がありますので、婦人科受診をお勧めいたします。鉄不足はあくまで需要と供給のバランスで生じますので、生理出血が特別多くなくても鉄欠乏性貧血になることはあります。
男性や閉経後の女性では、消化管出血の可能性に注意する必要があります。原因としては痔、大腸ポリープ、粘膜の炎症、さらには癌が含まれます。健診の便潜血検査も有用ですが、50歳以上の方においては、鉄欠乏性貧血の診断をきっかけに大腸カメラを検討いただくことも勧められます。
このように、鉄欠乏性貧血は単に鉄剤で治療をするだけではなく、鉄不足になった原因の評価が大切です。状況により婦人科受診、検便、消化管内視鏡をお勧めいたします。胃炎のある方はピロリ菌検査もご提案となりますが、この場合は保険は適応外で自費(800円)となります。
これらに特に問題がなく、鉄不足の原因がはっきりしない方が一定数いらっしゃるのも事実です。

  < 鉄欠乏の原因 > 

何が問題?「たかが貧血、されど貧血」

鉄欠乏性貧血は非常に多い貧血である一方、向き合い方も人それぞれ、非常に開きが大きい印象です。

「健診で初めてD判定となったので、一度受診しようと思った」

「今まで言われたことはなかったのに、初めて貧血と言われて心配になった」

「数値が段々下がっていて、何か病気があるのかと心配」

「20年くらいずーっと貧血。貧血じゃない時がないので気にしていない」

前述の通り、鉄欠乏性貧血は原因について振り返ることが大切です。

貧血自体は、軽度(目安としてヘモグロビン10.0以上)で症状がなければさほど気にする必要はないと思います。ネットで調べて「体が酸欠なのは大丈夫ですか?」「心臓が悪くなると聞いた」「癌があるかもしれないと見た」と不安になる方がいらっしゃいます。確かに貧血=酸欠は間違いではありませんが、貧血が軽度で普段通り生活を送れていれば、特に体に害があるわけではありません。元々心臓に持病のある方、ご高齢の方において、中等度以上の貧血(ヘモグロビン9未満など)は注意が必要です。心臓に負担がかかり続ける結果、心不全を誘発することがあります。消化管の癌の可能性については、検便などの大腸がん健診を定期的にしっかり受け、気になることがあれば内視鏡を検討されるのがよいと思います。

貧血症状は、ふらつき、疲れやすさ、息切れ(階段を上がる時など)が代表的です。軽度の貧血で症状を自覚する方は比較的少なく、進行した貧血(ヘモグロビン8台)でも貧血が徐々に進むために体が慣れてしまい、無症状のことは少なくありません。ただ、自覚症状がなくても、生活の変化などをきっかけに急に貧血症状が顕著となり、体調悪化をきたす可能性はあります。また、それまで症状の自覚がなくても、鉄剤内服を始めたら体が楽になったと初めて感じる方もいます。その他、頭痛氷食症=氷を習慣的に食べる(冬でも)、足がむずむずするなどの症状も鉄欠乏性貧血に関連することがあります。

このように一概にはまとめにくい鉄欠乏性貧血ですが、関連が疑わしい症状がある、ヘモグロビンが10.0未満、鉄不足を解消して今より体調が良くなるか試してみたい、などの場合は、治療をお勧めしたいと思います。後述の通り、鉄剤は副作用症状が出る方もいますので、貧血が軽度で症状がなければ経過観察も選択肢です。

治療
鉄剤を内服します。内服を始めると1ヶ月以内に一定の改善が得られ、2〜3ヶ月もすれば多くの場合正常化が得られます。目標はヘモグロビンの正常化だけではなく、フェリチン値(貯蔵鉄のマーカー)の十分な回復です。当院ではヘモグロビン、鉄、フェリチンの数値を院内検査で診察時に確認し、経過を評価の上で、最適な提案をいたします。
・鉄剤は、飲むと気持ち悪くなったり、便秘または下痢気味になる方がいらっしゃいます。その場合は、より副作用が少ない薬への変更をご提案いたします。内服を負担に感じる方は、毎日ではなく2日に1回の内服などでゆっくり補充していくのも1つです。薬は1日1回飲むものというイメージがありますが、鉄剤に関しては、ご自身が続けやすいように飲み方は融通可能と考えています。飲み始めると便の色が黒くなることがありますが、心配いりません。
・内服鉄剤の副作用が強い場合、貧血症状が強い場合は鉄剤の点滴も1つの方法です。効果は内服と大きくは変わりませんが、貧血症状が早く良くなったと感じる方もいらっしゃいます。当院では1週間以上空けて2回の点滴で治療が終了するお薬を使っています。
・鉄不足の原因が続いている場合は、内服をやめてしばらく経つと再び貧血に戻ってしまう傾向があります。忘れた頃にいつの間にか進んでいることがありますので、定期検査をお勧めします。
過多月経の方は閉経までの付き合いとなることもあります。一時の数値だけを見るのではなく、フォローについては長い目で考えたいところです。
まとめ
鉄不足の原因を考えることが大切です。鉄の補充で簡単に治療はできますが、鉄不足の原因が続いていると、治療終了後にまた貧血に戻ってしまいます。ケアについて長い視点で考えることをお勧めします。
 
当院の診療方針
当日のヘモグロビン、フェリチンの数値を診察時に確認し、数値の経過を評価した上で方針をご提案いたします。
 
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