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鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは
鉄不足が原因の貧血で、若年〜中年の女性に比較的多い貧血です。体内の鉄が不足することにより赤血球内のヘモグロビン産生が低下し、貧血となります。鉄欠乏性貧血では赤血球の大きさが小さくなり、赤血球の大きさを表すMCVという数値が正常より低くなっています(健診でもMCVは測定されることがあります)。血液中の鉄の濃度だけでなく、体内に貯蓄している鉄の数値(フェリチンと呼ばれます)が下がっているのが特徴です。
                 

鉄不足が続くと、まず貯蔵分の鉄の消費が始まり、フェリチンが低下します。フェリチンが枯渇してしまうと、血液中の鉄濃度、ヘモグロビンも下がり始め、鉄欠乏性貧血となります。

 <検査値の動き> 

 フェリチン低下↓ →血清鉄低下↓、ヘモグロビン低下↓(=鉄欠乏性貧血)

鉄不足となる原因
鉄分は日々の食生活で摂取されるものの、摂取量よりも消費量が上回ると鉄不足となります。鉄不足がしばらく続くことでヘモグロビン産生が低下し、貧血となります。鉄不足となる原因は、次の図の通りいくつかありますが、生理出血による鉄の喪失量増大が最も多い原因です。生理痛が強い方、出血量の多い方は、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科疾患がある可能性もありますので、婦人科受診をお勧めいたします。鉄不足はあくまで需要と供給のバランスで生じますので、生理出血が特別多くない方でも鉄欠乏性貧血になることはあります。他、自覚されない慢性的な出血がないかも注意が必要です。自覚症状の出ない持続的な出血とは消化管出血のことを指し、原因としては痔、ポリープ、粘膜の炎症、さらには癌が含まれます。このように、鉄欠乏性貧血は単に鉄補充で治療をするだけではなく、鉄不足になった原因の評価が大切と考えます。状況により、婦人科受診、検便、消化管内視鏡検査をお勧めいたします。場合により血液検査によるピロリ菌の検査もご提案しておりますが、この場合は保険は適応外で自費(800円)となります。これらに特に問題がなく、鉄不足の原因がはっきりしない方が一定数いらっしゃるのも事実です。

  < 鉄欠乏の原因 > 

 

治療
・鉄剤を内服します。内服を始めると1ヶ月以内に一定の改善が得られ、2〜3ヶ月もすれば多くの場合正常化が得られます。目標はヘモグロビンの正常化だけではなく、フェリチン値(貯蔵鉄の値)の十分な回復です。当院ではヘモグロビン、鉄、フェリチンの数値を院内検査で確認し、体の状況を評価した上で、その都度最適なご提案をいたします。
・鉄剤は、飲むと気持ち悪くなったり、便秘または下痢気味になってしまう方がいらっしゃいます。その場合は、より副作用が少ない薬への変更をご提案いたします。内服を負担に感じる方は、毎日ではなく2日に1回の内服などでゆっくり補充していくのも1つです。薬は1日1回飲むものというイメージがありますが、鉄剤に関しては、ご自身が続けやすいよう飲み方は十分融通が利くと考えています。飲み始めると便の色が黒くなることがありますが心配いりません。
いろいろ工夫しても内服がご負担となる場合には、鉄剤の点滴も可能です。
・鉄不足の原因が続いている場合は、内服をやめてしばらく経つと再び貧血に戻ってしまう傾向があります。忘れた頃にいつの間にか結構進んでいることがありますので、定期検査を続けることをお勧めします。
鉄欠乏性貧血は、鉄剤で数値自体はすぐ良くなりますが、体の鉄不足傾向は数年続く場合もあります。一時のヘモグロビンの数値だけを見るのではなく、長い目でのフォローについても考えたいところです。当院では、貧血が軽度で症状がなければ、経過観察という選択肢もご提案いたします。
鉄不足の原因を考えることも大切です。鉄の補充で簡単に治療はできますが、鉄不足の原因が続いていると、治療終了後にまた貧血に戻ってしまいます。ケアについて長い視点で考えることをお勧めします。
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