本態性血小板血症
- 骨髄で造血系の細胞に発生した遺伝子異常により、血小板産生が加速され、血小板を過剰に造りすぎてしまう病気です。数年来の健診で毎回指摘され、最終的に受診をしたところ診断されることもありますが、このような場合は1〜2年ごとに徐々に血小板数が増えていることが多いです。通常自覚する症状はありませんが、時にだるさ、皮膚のかゆみ、お腹の張りや不快感(脾臓の増大による)、体重減少を伴うこともあります。
- 診断
二次性の要素が乏しい場合は、本態性血小板血症の原因となる遺伝子変異のスクリーニングをお勧めします。本態性血小板血症では、約半数でJAK2V617F変異と呼ばれる遺伝子変異が見られ、保険診療で血液検査で調べることができます。骨髄検査で血小板の元となる細胞の増加を確認し、診断となります。
- 治療
血栓症を予防することが主な治療目的となります。
血栓症のリスク(血栓ができやすいかどうか)は、61歳以上、JAK2V617変異陽性、過去に血栓症を起こしたことがあるの3つのうち、該当する数(0/1/2/3)により、とても低い/低い/中間/高いの4段階のレベルで評価されます。血栓症のリスクが“とても低い“以外の方は、基本的に血液をサラサラにする薬(アスピリン)の内服が勧められます。加えて年齢61歳以上の方は、過剰な血小板産生を抑える治療も勧められます。多くの場合はヒドロキシウレアという内服薬が使われます。ヒドロキシウレアは抗悪性腫瘍剤に分類されるお薬ですが、通常ほとんど自覚する副作用なく継続可能です。血小板値が増えすぎず、減りすぎないように薬の量を調節します。白血球や貧血の数値をやや下げてしまうこともありますので、下がりすぎないよう注意します。通常2〜3ヶ月ごとの通院で長期的に管理していきます。
ヒドロキシウレア以外の治療薬にアナグレライドというお薬があります。抗悪性腫瘍剤に該当しないため、特に若い方に使われる傾向がありますが、頭痛や動悸の副作用に注意が必要です。
治療法としては上記の通りになりますが、血栓症には高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満など複数の発生要因があります。これらの持病や因子がある場合は、できるだけ改善を目指し血栓リスクを軽減させることも重要となります。
この病気は血栓症を予防することが一番の目標であり、「血小板数は○○以下にしなければならない」という絶対的な目標数値はありません。しかし、増えすぎにはやはり注意が必要です。血小板数が高度に増加すると、血液中の凝固因子に影響して止血機能に異常をきたし、出血リスクも加わることがあります(後天性フォン・ヴィレブランド病とも呼ばれます)。個人差もあり一概には言えませんが、総じて血小板100万以上のときは注意する必要があります。
腫瘍性疾患の一種ですが、予後は良好です。真性多血症よりもまれではありますが、10年以上の長い経過において骨髄が線維化と呼ばれる変性をきたしたり、白血病に移行したりすることがあります。
血栓症予防を第1目標に長期管理が重要です。