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多発性骨髄腫

多発性骨髄腫はどんな病気?
  • 形質細胞の腫瘍です。形質細胞は骨髄にわずかに(全細胞の2%以下)存在する細胞で、体内の異物を排除するための抗体(免疫グロブリンと呼ばれます)を作っています。腫瘍化した形質細胞は、主に骨髄、場合によっては骨髄の外で増殖し、異常な抗体を作りすぎてしまいます。結果、腎機能障害、造血障害(主に貧血)や骨の破壊、血中カルシウム濃度の上昇といった、多発性骨髄腫(以下、骨髄腫)の代表的な異常を引き起こします。異常な抗体が増加する一方、正常な抗体作りには大きな支障をきたし、免疫機能が低下して感染症にかかりやすくなったりします。これらの異常の出かたは患者さんによって個人差が大きく、既に骨折をきたして動けないほどの骨痛でつらい思いをする方もいれば、自覚的には無症状の方もいらっしゃいます。
  • ほとんどが、多発性骨髄腫の前癌状態であるMGUSから年月をかけて進展し、発症します。

  < 多発性骨髄腫はどんな病気?(イメージ) >

 

M蛋白(エム蛋白)とは
  • 免疫グロブリンにはIgG, IgA, IgM, IgD, IgEの5種類があります。腫瘍性の細胞が作る腫瘍性の免疫グロブリンは、モノクローナル蛋白(略してM蛋白)と呼ばれます。M蛋白にはIgG, IgA, IgM, IgD, IgEの5種類の他、免疫グロブリンの一部だけが作られるベンスジョーンズ蛋白 (Bence Jone Protein ; BJP) があります。通常骨髄腫で検出されるM蛋白はIgG, IgA, BJPのいずれか(ときに2種類)です。M蛋白がIgGのときはIgG型多発性骨髄腫、M蛋白がBJPのときはBJP型多発性骨髄腫と呼ばれることがあります。IgM, IgD, IgE型多発性骨髄腫は、非常に稀であると言えます。M蛋白はその後の経過において腫瘍マーカーとして使いますので、最初にしっかり同定することが必要です。以前はIgA型は予後不良と言われることがありましたが、現在はそのような考え方はされていません。
  • 血液中に流れるM蛋白の一部をフリーライトチェーン(遊離L鎖)と呼びますが、フリーライトチェーンを血液検査で調べることで、より高感度にM蛋白量を測ることができます。M蛋白よりも厳密な治療効果判定に使われます。

  M蛋白の種類

 

多発性骨髄腫の診断
  • 診断に当たり血液検査、骨髄検査、画像検査(レントゲン, CT, MRI, PET)を行い、骨髄腫による体の障害の程度、リスク(治療が効きやすいか、予後など)を評価します。リスク評価には、R-ISS分類と呼ばれる病期分類と、骨髄検査時に解析される染色体検査の所見が重要です。

 骨髄検査:骨髄の腫瘍性形質細胞がどれくらい増えているか、腫瘍が有している染色体異常を調べるため、何種類かの検査を提出します。

 R-ISS分類:血液検査の数値(β2ミクログロブリン、アルブミン、LDH)と、骨髄検査で提出されるFISH (フィッシュ)と呼ばれる染色体検査の結果に基づき分類します。

 染色体検査:染色体とは遺伝子の集合体のようなもので、染色体異常は細胞の性質を大きく左右することがあります。骨髄腫では比較的よく見られる染色体異常が複数同定されており、特に高リスクと位置付けられる染色体異常が検出された場合は、その後の経過に注意して治療にあたる必要があります(薬が効きにくかったり、早期に再発しやすいことがあります)。

  • 診断
形質細胞の腫瘍性増加があること

骨髄の形質細胞が10%以上

形質細胞の腫瘤(=腫瘍が塊を作って増えている)

に加え、次の[1] [2]のいずれかが該当する場合に診断確定となります。

[1] 骨髄腫を原因とする体への悪影響がある

(どれか1つでも)

・高カルシウム血症

・腎機能低下

・貧血

・骨異常

[2] 早期に体に悪影響をきたす可能性が高いとされる因子がある

(どれか1つでも)

・骨髄の形質細胞が60%以上

・フリーライトチェーンの高度異常値(比として100以上)

・MRIで5mmを超える骨の異常所見がある

 

治療
  • 骨髄腫に関連した症状があったり、体に影響をきたしているような場合は、治療を開始します。特に症状や体への影響が見られなくても、早期に進行する可能性が高いと判断される場合は、治療が勧められることがあります。
  • 治療計画の大枠は、(1) 65歳未満で元気な方と、(2) 65歳以上の方とで異なります。どちらも可能な限り腫瘍を減らすことが目標ですが、(1)の方には自家末梢血幹細胞移植(自家移植)を伴う強力な化学療法も組み込んだ積極的な治療メニュー 、(2)の方には無理をせずに骨髄腫によるダメージを回復させる比較的やさしい治療メニューとなっています。骨髄腫は診療全体において近年目覚ましい進歩が見られており、新しい治療薬・治療方法が大きく増えました。とはいえ、残念ながらまだ治癒できるとは言い難く、長期間粘り強く治療を継続することで、体内にわずかに残存する腫瘍細胞までも極力減らしていくことが予後の改善に役立ちます。
  • 骨髄腫の治療薬は副作用が優しい薬が多く、内服での治療方法もあります。お元気な方であれば、80歳〜90歳のご高齢の方でも治療が可能なことがあります。

経過や症状に個人差が大きい病気ですが、有効性の高い治療薬が複数出ています。自家移植が適応になるかどうかで治療方針が異なります。

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