慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病はどんな病気?
- 通常無症状のため、健診などでたまたま血液検査を受けた際に白血球増加を指摘され、診断されることが多いです。
- 原因は不明ですが、骨髄の造血幹細胞に特徴的な染色体異常(8番染色体と22番染色体の転座=フィラデルフィア染色体)が発生し、これに伴う遺伝子異常(BCR-ABL;ビーシーアール エーブル)により、造血が異常に加速するスイッチが入ります。白血球が知らないうちにゆっくり増え続け、気づいた時には2〜5万、時には10万以上となっていることもあります。血小板も併行して増加することがあり、時に100万以上となることもあります。
- 血液検査からこの病気が疑われる場合は、フィラデルフィア染色体やBCR-ABL遺伝子異常の有無を骨髄検査、血液検査で調べます。
この病気と診断されたら…
- “白血病”という言葉がつくため、病名を初めて聞いてドキッとされる方も多いと思いますが、お薬の内服で通常は病気のコントロールが可能であり、通常通り生活できます。
- 治療をしないと、時間をかけて(約3〜5年で)急性白血病に進行してしまいます。
- 治療はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI阻害薬)と呼ばれるお薬を内服します。初回治療導入時は、現在4種類ある薬の中から1種類を選択します(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブのうちどれか)。患者さんの持病や過去の病歴を伺い、より適切と思われるお薬をご提案します。
治療開始後
- 薬の内服を始めると、増加した白血球は右肩下がりに減少します。白血球が正常化したあとは、白血病の残量はBCR-ABL遺伝子の量を測定して知ることができます。遺伝子量はIS (International Scaleの略;アイエス)と呼ばれる国際的な基準値で評価され、結果は約100〜0.0007の範囲となります。1年以内に0.1以下を達成したいところですが、現実には多くの患者さんで達成できます。治療が十分に効いて測定可能下限値 (0.0007)を下回ると、検出感度未満となります。
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これらのお薬は一般的にとてもよく効きますが、各お薬ごとに注意が必要な副作用があります。副作用には、(1) 飲み始めてまもなく出るもの、(2) 数ヶ月〜年単位で徐々に現れるもの、(3) 自覚症状として出るもの、(4) 症状を伴わないものがあります。例として挙げますと、(1) 皮疹、下痢など、(2) むくみ、胸水、腎機能障害、血管障害など、(3) 皮疹、下痢、むくみなど、(4) 胸水、肝機能障害、腎機能障害、高血圧、血管障害など、です。
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副作用が問題となる場合は、薬の量を減らしたり、他の治療薬に変更したりします。治療の効果が不十分な場合は、他の治療薬に変更することを考えます。治療薬を変更する場合は、先の4種類の他にポナチニブ、アシミニブという2種類の薬も保険適応となります(2024年7月現在アシミニブは治療変更が2回目以降のときに選択できます)。
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慢性骨髄性白血病の治療は、「○年で終わり」というような明確な決まりはなく、原則的には生涯続けるものとされています。長期的な副作用にも注意して、身体へ負担がかからないよう続けていくことが大切です。副作用、薬価など、気になる点はご質問・ご相談ください。
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よい治療効果(ISが少なくとも0.0032以下)が一定期間(2年以上)安定して維持できている場合は、治療を一旦やめてみる試みもされるようになりました。それまでの経過で薬への耐性が生じていないこと、治療を3年以上安定して継続できていることなども好条件となります。薬をやめると半分くらいの方が再燃してしまい、治療再開が必要とはなるものの、残りの半分の方はそのまま再燃せず経過し、事実上治療が“卒業”となります。治療中止の際は、中止後の検査スケジュールや可能性のある症状など、知っておいて頂きたいポイントがあります。ご興味のある方、(この先ずっと薬を飲まないといけないのか…)と気になる方はどうぞご相談ください。
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この病気は、少ないとはいえ10〜20代で発症する方もいらっしゃいます。女性の患者さんでは、時に治療と妊娠の兼ね合いを悩まれる方もいらっしゃいます。妊娠中はお薬を中止する必要がありますので、妊娠・出産についてはあらかじめご相談の上、計画を立てる必要があります。
いい治療薬がありますので、治療を続けられていれば心配なく日常生活を送ることができます。薬との相性が問題となることがありますので、副作用に注意していきましょう。