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骨髄異形成症候群(MDS)

MDSとは

骨髄異形成症候群 (Myelodysplastic syndrome : MDS)

骨髄の造血幹細胞に異常が生じてしまい、造血幹細胞から造り出される白血球、赤血球、血小板に障害をきたす病気です。白血球数の減少、貧血、血小板数の減少といった異常の他、少なからず細胞の機能異常も引き起こします。

 < 骨髄異形成症候群はどんな病気?(イメージ) >

MDSの問題点 2つ

骨髄異形成症候群の問題点は、大きく分けて①造血障害②白血病のリスクの2点です。

①造血障害

白血球(主に好中球)が減少するとばい菌への抵抗力が落ち、発熱をきたしやすくなったり感染症の重症化リスクが高くなります。赤血球が減少すると貧血となり、体は慢性的に酸欠状態となり見えない負担がかかります(骨髄異形成症候群の貧血はゆっくり進行することが多く、高度の貧血でも症状がないことがあります)。血小板が減少するとケガをしなくても出血するリスクが高くなり、またケガをした時・手術などの際に止血しにくいというリスクが想定されます。

②白血病のリスク

骨髄異形成症候群では、ある程度の段階から骨髄や血液中に白血病細胞(芽球)が確認されるようになります。芽球の数は全細胞のうち何%を占めるかで表示されますが、この芽球の数には注意が必要です。骨髄の芽球が5%以下だと比較的少ないと言えますが、10%以上ですと十分注意していく必要があります。骨髄異形成症候群は“がん”ではありませんが、白血病の“前癌状態”とも言え、芽球が20%を超えると病名は骨髄異形成症候群ではなく急性白血病に該当し、白血病として治療を考えていく必要があります。なお、芽球は骨髄で生まれ血液中に流れてくるため、芽球の数は血液よりも骨髄の方が通常多くなります。

診断、リスク判定

診断時の所見は様々です。“初期”の場合は軽い貧血程度ですが、“進行期”では3種類全ての血球が大きく減少したり、骨髄や血液中に芽球が確認されるようになります。この中間くらいの状態の方も多く存在します。血球減少の程度、芽球の比率(増加の程度)、染色体異常の種類から、重症度を分類し予後を予測するシステム(IPSS-Rと呼ばれます)があります。

  • 染色体とは遺伝子の集合体のようなものです。腫瘍性疾患は何らかの染色体や遺伝子に異常が発生し、細胞の機能異常を起こすことで発症すると考えられます。染色体異常は、その種類によって細胞の性質を大きく左右することがあります。骨髄異形成症候群で見られる可能性のある染色体異常が複数同定されており、特に“不良”と位置付けられる染色体異常が検出された場合は、その後の経過に注意して治療にあたる必要があります(進行が速い、芽球の増加をきたしやすいなどのリスクが高まります)。染色体異常は骨髄検査で採取した骨髄液を染色体検査に提出し、調べます。染色体異常の所見の表記は暗号のようで難解ですので、気になる方は担当の先生に聞いてみてください。
  • IPSS-R (International Prognostic Scoring System-Revised)

 下の表で、①〜⑤の5つの項目それぞれで該当するスコアを確認します。5つのスコア全てを合算し、合計点からリスク判定を行います。

  • 血液や骨髄の所見によって経過は全く異なります。仮に、ご友人同士が同時に“骨髄異形成症候群”と診断されたとしても、全く違う病気であるかのようなことがありますので、患者さん1人1人において評価をし、道筋を立てることが大切です。
治療
軽症

低リスク

(IPSS-Rでとても低い,低い)

経過観察

貧血に対してエリスロポエチン注射

中等症 中間リスク(IPSS-Rで中間) 状態により軽症または重症の治療法から選択
重症

高リスク

(IPSS-Rで高い,とても高い)

貧血、血小板輸血に対して必要に応じ輸血

アザシチジン

造血幹細胞移植

※軽症例において、自身の免疫を介して血球が減少していることがあります。この場合は再生不良性貧血と似た要素を持つと考えられ、免疫抑制剤が効くことがあります。 

※5番長腕染色体の欠損という特徴的な染色体異常がある場合は、レナリドミドという治療薬が有効です。

  • エリスロポエチンというのは赤血球の造血を促す体内物質ですが、薬剤化されており、腎不全に伴う貧血の治療薬として広く使われています。骨髄異形成症候群で貧血が見られる場合、腎不全に伴う貧血に投与されるよりも多い投与量、多い投与回数で使われます。用法用量上は240ugを週1回、特に決まった期限なく皮下注射で続けていきますが、経過や患者様の来院できるご都合に合わせ、適宜調整させて頂きます。
  • 2024年に登場したルスパテルセプト(レブロジル)は、エリスロポエチンと同様に骨髄異形成症候群の貧血に対する注射薬です。こちらは3週間に1回の皮下注射となっており、注射の頻度が減らせるメリットがあります。
  • 骨髄異形成症候群は、実際のところ根治的治療は造血幹細胞移植しかありません。造血の根本である造血幹細胞に問題があるため、骨髄の細胞を全て取りかえる移植でなければ、造血の完全な正常化は望めません。しかし、造血幹細胞移植は強力でリスクの高い治療法となるため、ご高齢の患者さんにはなかなか勧めることができません。症状がある程度進行しているものの移植が勧められない場合は、アザシチジンという抗がん剤による治療が候補となります。アザシチジンは造血障害を回復させ、増えた芽球を減らす効果が期待できます。残念ながら、全員で効果が見られるわけではなく、効果もずっと続くわけではありませんが、目下勧められる治療法の1つです。
  • アザシチジン(ビダーザ)

このお薬が勧められる方:中等症〜重症のMDS 

※急性骨髄性白血病の治療にも使われます

お薬の投与方法:皮下注射(お腹や太ももなど) ※点滴での投与もできます
4週間ごとに、7日連続投与する(1コース=4週間=28日間)

注意する副作用:吐き気、食欲低下、血球減少(白血球減少、貧血の進行、血小板減少)、注射した場所の皮膚の赤みや痒み など

※脱毛はありません

50%くらいの人で治療効果あり(4コース目までに治療効果が現れる)
効果がある場合は、基本的に効果が続いている限り継続する

血球減少、白血病細胞の出現を特徴とする病気です。治療法は貧血に対する注射、アザシチジンを使った化学療法、造血幹細胞移植に加え、輸血となります。異常の程度に応じて治療方法が異なります。

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