サラセミア
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赤血球は体内に酸素を運びますが、この役割は赤血球内のヘモグロビンという構造物が担っています。ヘモグロビンを造るタンパク質(グロビン)に先天的に異常があり、貧血となるのがサラセミアという病気です。ヘモグロビン異常を持つ赤血球は、造血の場である骨髄か、血液細胞の処理場である脾臓で壊されてしまいます。グロビン鎖にはアルファ(α)、ベータ(β)の2種類があり、 αグロビンに異常がある場合はαサラセミア、βグロビンに異常がある場合はβサラセミアと呼ばれます。世界人口の5%が何らかのサラミセア遺伝形式を持っていると言われており、地中海沿岸、東南アジア、アフリカなどに多いと言われますが、日本でもαサラセミアが3500人に1人、βサラセミアが1000人に1人いると言われます。国内のほとんどのサラセミア患者さんは、無症状で日常生活に支障のない軽症例です。
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遺伝性疾患であり、性別によらず親から子へ50%の確率で遺伝する(片方の親が有病の場合)、常染色体優性遺伝という形式で遺伝します。しかし、親の貧血の程度が軽い、あるいは貧血をきたしていない場合もありますので、家族歴を必ず伴うわけではありません。
- サラセミアは、グロビン遺伝子の異常の程度によりグロビン鎖の量が異なり、グロビン鎖の量が少ないほど重症となります。大きく分けて、ペアとなる対立遺伝子の片方のみ異常で軽症のものをサラセミア・マイナー、両方が異常で重症となるものをサラセミア・メジャーと呼びます。
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鉄欠乏性貧血と同様、赤血球が小型となる貧血のため、血液検査上、一見鉄欠乏性貧血が疑われることがあります。しかし鉄は不足していません。診断確定のための主たる手段は遺伝子検査となりますが、検査は保険適応外であり、対応している検査会社も国内で限られています。このため、実際は家族歴をふまえ、鉄欠乏性貧血などその他の貧血を除外することで判断されます。診断確定のための検査を希望される方は、当院から外部の検査会社に依頼をすることは可能ですので、ご相談ください。保険適応外ということもあり、検査費用は比較的高額となりますので、気になる方はお問い合わせください。
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軽症例では治療は不要で、通常通り生活できます。妊娠や感染症をきっかけに一時的に貧血が進行することがありますので、このような時に体調不良が気になったら受診をお勧めいたします。