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自己免疫性溶血性貧血(広義)

Auto Immune Hemolytic Anemia (AIHA;アイハ)

  • 体内で自身の赤血球に反応してしまう抗体蛋白(自己抗体)ができてしまい、自己抗体と反応した赤血球が体内で壊されてしまうようになります。一種の免疫異常に起因し、直接クームス試験という検査が陽性となるのが特徴です(陰性タイプが10%に見られます)。骨髄では頑張って赤血球を造って補おうとしますが、次々壊されてしまうため、結果貧血となります。AIHA(広義)の自己抗体には、最も活性化して溶血を起こしてしまう温度が2通り存在します。この至適温度が温かめ(37℃=ほぼ体温です)だと温式AIHA、低め(4℃)だと冷式AIHAという呼び方が使われます。AIHA自体、頻度は比較的まれですが、温式AIHAと比べ冷式AIHAはさらにまれと言えます。温式温式AIHA、冷式AIHAにはそれぞれ次の病名が該当します。
     
    温式AIHA 自己免疫性溶血性貧血(狭義のAIHA)
    冷式AIHA

    寒冷凝集素症 …気温が寒くなると貧血が悪化する傾向があります

    発作性寒冷ヘモグロビン尿症

    なお一言でAIHAというと、これら3つの総称を指す広義のAIHAと、温式AIHAを指す狭義のAIHAの両方を意味します。(わかりにくいですが)
  • 上記は自己免疫疾患(関節リウマチ、SLE、甲状腺疾患など)、リンパ増殖性疾患(悪性リンパ腫、慢性リンパ性白血病)、感染症(マイコプラズマ、EBウイルスなど)、卵巣腫瘍(奇形腫など)に関連して発症することもあります。このため、基礎疾患がないかの確認も大切です。 ※マイコプラズマ…肺炎や気管支炎など呼吸器系の感染症を起こす細菌

  • 急速に貧血が進むことにより、息切れ、倦怠感など強い貧血症状をきたすことが多いです。元々心臓の弱い方は、急な貧血進行に心臓が対応しきれず、心不全を併発してむくみや息切れをきたしてしまうこともあります。また、溶血が激しいとヘモグロビン尿、腎不全を合併することもあります。

  • 関連する疾患がなく原因不明のAIHAは、国が定めた難病に該当します。

    AIHA(狭義)
  • 強い貧血症状で発症することが多く、症状が強い場合は迅速な治療開始が勧められます。基本的にはステロイドを体重と同じミリグラム (mg) で毎日内服しますが(例えば体重50kgの人は1日50mg=プレドニゾロンで10錠)、年齢や状況により減量します。80%の方で治療効果(貧血の改善)が見られます。多い量のステロイドをそのまま無期限に続けることは体への影響が大きすぎるため、せっかく効いていたとしても徐々に減らしていく必要があります。すなわち、最初の投与量を約4週間続けたあとは、1〜2週間ごとに少しずつ減量を進めます。減量が進むにつれ再燃するリスクが高まるため、この過程は慎重な経過観察が必要です。できれば完全に中止(ゼロ)できれば理想的ですが、再燃なく5〜10mgまで減量できれば、とりあえずは良いと思われます。

  • ステロイド治療が難航する場合は、溶血の主座である脾臓の摘出手術(脾摘)が検討されます。脾摘の有効率は高いですが、1/3で再燃をきたしてしまいます。
  • 一般的に輸血は貧血に対する確実かつ即効性のある対処法ですが、温式AIHAの場合は輸血は慎重に行われます。理由は、病気に伴う自己抗体による検査反応により、相性のいい輸血製剤を見つけにくいこと、輸血した赤血球に反応して溶血反応が悪化するリスクがあることです。しかしながら、貧血が非常に強く全身状態に関わる場合は、輸血をした方がいいと言われます。
    寒冷凝集素症

    微小血管内での溶血に起因する、手足の指先のチアノーゼや感覚異常、レイノー症状をきたすことがあります。

    寒冷刺激を避けることが最も有効で現実的な対処法となります。輸血が適応となる場合は、通常冷所保存される赤血球輸血製剤を温めて輸血するなどの配慮も必要となります。

    ー 寒冷凝集素症

    原因疾患がない寒冷凝集素症です。リンパ増殖性疾患を伴い単クローン性のリンパ球を伴いますが、悪性リンパ腫とは異なります。スチムリマブ、化学療法の適応を検討します。

    ー 寒冷凝集素症候群

    感染症などの原因疾患を伴う寒冷凝集素症です。

    マイコプラズマ感染が代表的ですが、この場合はマイコプラズマによる肺炎の発症から2〜3週間たったあと、回復期に急な溶血性貧血をきたします。その後 2〜3週間で自然回復します。

    寒冷ヘモグロビン尿症
  • まれですが、主にウイルス感染後の小児に見られることがあります。

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